>> 今週の特集「現実の忍法、ショボすぎる」

君はカチンコの有用性を知っているか

企画
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——カチンコ。

主に映画の制作現場で用いられ、撮影開始の合図として使われている道具だ。名前の由来は言わずもがな。

誰しも一度は「アァクションンンッ!!」の掛け声と共にカチカチ鳴らした経験、もしくは願望があるはずだ。

映画撮影というごく限られたシーンでしか使用されない反面、それが我々素人の興味を掻き立てる。


しかし。

カチンコの機能は、ただ単に我々が映画ごっこに興じる程度だけのものなのだろうか。この疑問に、私は首をかしげる。

 

 

いや。

 

そんなはずはない。

 

カチンコに秘められたポテンシャルは、そんなものではないはず。

 

そこで、今回はカチンコの有用性について様々なシーンを交えながら識者諸君にぜひお伝えしていきたい。

ちなみになぜ素人の私がカチンコを持っているかというと、およそ1年前にツイッターフレンドからそそのかされて買ってしまったからである。

 

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Case1:本来の使い方


まずは、本来のカチンコとしての使い方を見てみよう。

撮影開始の合図を促す「カチン」という小気味よい音は、無機質な毎日を途端にドラマチックにしてくれる。


アァクションンンッ!!

この日は昼まで寝ていた上、起きてからは酒を飲みながらゲームをするだけという無味無臭の過ごし方をしていた。

ところが、カチンコを施すことでまるでクライム映画に出てくる怠惰で気だるげな主人公かのような感覚に陥った(長髪パーマ、無精髭を蓄え、極度のヘビースモーカーでやけに暗い打ちっぱなしコンクリートの部屋に住んでいる)。

実際は短髪ストレート、髭はまっさらでタバコは一切吸わず、明るい南向きの部屋に住んでいる。

 

このようにカチンコ本来の使い方を行えば、つまらない日常に一筋の彩りを与えてくれるものだと私は考える。


しかしながら、映画風演出は一旦やめておく。

画像加工が面倒くさいからだ。

 

Case2:枕として


次に、枕としての使い方を考えてみる。

ここで即座に「ないわ」と思った識者の諸君。少々先入観に囚われすぎではないだろうか。


これはカチンコを横から接写した非常に珍しい写真だ。

よく見てほしい。


カチンコを構成する、拍子木とボードの境目に絶妙な段差が生じているのが分かるだろうか。

これこそがまさに絶頂睡眠に誘うRelaxation Stepであり、カチンコならではの特徴といえる。


実際に寝てみた。

想像した以上に頭にフィットしている。


まるでそこには枕というものが存在しないかのような、不思議な感覚だ。

これがRelaxation Stepの為せる業なのか。


私の頭が極度の絶壁だということを差し引いても、枕としては充分に役目を果たしている。

枕といえば高品質で低反発なものを選ぶのが常とする令和の時代。

「板」一枚で枕としての機能を全うしようとするカチンコの姿勢は、現代の寝具業界へのアンチテーゼとして警鐘を鳴らしているのかもしれない。


しかし犬の毛並みのような髪質だな。

 

Case3:時計として

続いて時計という側面から使い方を考えてみよう。

早速、腕に取り付けてみる。

 

 


やや大ぶりといえば大ぶりだが、その視認性の高さには注目をしたい。

あぁ、今は14:31なんだな、ということが瞬時に確認できる。

遊☆戯☆王でこんなアクセサリーが登場した覚えがあるのは私だけだろうか。


ただ、1分経つごとに手動で書き直さなければならないというデメリットは存在する。

事実として存在する。


ただいま、14時32分をお知らせします。

 

しかし、考えてもみてほしい。

不便であればあるほど愛着が湧くというものは数多く存在している。レザー製品、旧車、ヴィンテージアイテム、アンティークグッズ…。

機能美を超える愛情が、カチンコにはある。時計としての使い方は、そんな男のロマンを表しているといえる。

 

Case4:マスクとして


次は、マスクとしての使い方を考えてみる。


昨今の新型コロナウイルスの流行を鑑みると、飛沫防止アイテムとしてのカチンコの存在意義も問うてみたいからだ。

 

 


どうだろうか。

サイレントヒルのクリーチャーとして登場しそうな存在感を放っている。

とりあえずは顔を全面に覆っているので、飛沫防止には大いに役立ちそうだ。


前方を確認する際は、拍子木を少し上に傾けるだけで対応可能だ。まさにマスクのために作られたと言っても過言ではない。

しかし言いようのない不気味さは拭いきれない。なぜかちょっと左に寄っているのも気持ちが悪い。


加工をしてみると、身代金4万3,000円を要求する愉快犯みたいになってしまった。

下位モデルのルンバでも買うつもりなのだろうか。

 

Case4:料理グッズとして


料理をするシーンでも、カチンコは間違いなく活躍する。ここからが本編である。

今回は餃子を調理していく。もちろん、皮も手作りだ。カチンコがあれば、料理の負担が一切なくなることは業界では有名な話である。

使用するレシピは以下の通り。

  • 豚ひき肉
  • 白菜
  • ニラ
  • 醤油
  • オイスターソース
  • にんにく
  • しょうが
  • 味噌
  • 薄力粉
  • カチンコ

割と一般的で、シンプルなレシピといえよう。


まずは白菜をみじん切りにする工程だ。

通常は包丁を使って進めていく作業であるが、


当然、カチンコを使用する。

まるで出刃包丁かのような佇まいからは、鋭い切れ味を連想させる。


(ぜんっぜん切れねぇ)


切断に成功。

人類にとって、大きな、とても大きな一歩だ。


慣れ、というものが道具にはある。

最初こそじゃじゃ馬のように言うことを聞かなかったカチンコが、今は驚くほど手に馴染む。しっかりと手綱を握らせてくれているのだ。

 


しかし、みじん切りはこれが限界だった。

「微塵」の定義は人それぞれあるが、私の中では十二分に定義内に収まる仕上がりだ。

何の問題もない。


ボウルに移し、塩を振っておく。

浅漬けを作っているかのような錯覚を覚える。


次に、ニラを同様に細かく切っていく。

ニラは餃子に独特の香りとアクセントをもたらしてくれる、必要不可欠な存在だ。


(うーわ先っぽの方ぜんぜん切れねぇ)


野菜の下ごしらえ完了。


キッチン内にニラの匂いが充満して非常に臭いため、一時的に蓋をしておく。

こんな時にもカチンコは力を発揮してくれる。まるで優しい母のように、困った時にはそっと寄り添ってくれる。

 


肉の下ごしらえはダイジェストめにお送りする。

調味料たちからの視線が気になってしまい、手つきにも緊張が走った。


水気を切った白菜とニラを加え、よく練っていく。

やはり画面内にカチンコがあるとどこか安心するのは、私だけだろうか?


タネはラップをし、1時間ほど冷蔵庫で寝かせておく。

ここは普通にラップを使う。

 


次は餃子の皮作りだ。

正直、餃子を作ること自体初めてなので、この時点で既に嫌気が差している。


薄力粉と40℃くらいのお湯を準備し、


まとまりが出るまで箸の頭を使って混ぜる。

それっぽい料理の豆知識だが、なぜこれが効果的なのかはよく分かっていない。レシピサイトにそう書いてあったからこうしているだけだ。


まとまってきたら後はひたすらこねる。

このくだりは残念ながらカチンコの出番はない。先ほどから、逆立ちしてすねている。


このようにくっつかない状態になったら一旦完了だ。


蓋をして、こちらも冷蔵庫で1時間ほど寝かせておく。

 

 

 

 


だいぶ生地が落ち着いてきたので、取り出す。

長時間に渡る餃子の調理に辟易とし、もう酒を飲み始めている。大丈夫。クライム映画の主人公ならきっとこうするはずだ。


生地を4つに分け、細長く伸ばしたら、


1本を5つに切り分けていく。

そう。識者諸君のお待ちかね、カチンコの出番だ。

正直、スケッパーより使い勝手が良いという印象だ(スケッパーは使ったことはない)。


小分けに切り分けた後も、カチンコの出番は続く。

心踊る展開だ。


テーブルには打ち粉をしている。


せいッッッ!!!!


そう、生地を伸ばしていく作業だ。

まさにカチンコにとって打ってつけの役割といえるだろう。


餃子の皮に、皮としての命を吹き込む大事な工程だ。

自然と身が引き締まる。気づくと、酒を飲むのをやめていた。

作業を進めていく。


中にはミジンコを型どったとしか思えないような皮も生まれてしまった。

正しい餃子ではないかもしれないが、私にとっては可愛いミジンコだ。


全20枚、餃子の皮の成形に成功した。

途方も無い作業だった。もう二度としたくはない。


餡を詰める。

やや大ぶりといえば大ぶりの具材だが、食感の良さに貢献するはずだと願いたい。


遂にここまで到達した。

「焼き」の工程だ。


1分ほど焼いた後に水を回しかけ、蓋をして蒸し焼きにする。

 


ご飯とお味噌汁を用意して、餃子定食の完成だ。

長かった。ここまで本当に長い道のりだった。

そしていざ実食というこんなシーンでも、カチンコは活躍してくれる。そう、食器を乗せるトレイ代わりになるのである。


しかし、4皿も乗せるには少々心許ないサイズ感のカチンコである。

どうしたものか。

 

 


そういう場合は、1サイズ大きなカチンコを用意するのが得策といえる。


配膳しよう。

さぁ、楽しい食事の始まりだ。


いただきます。

お味噌汁の位置に出っ張りがあったのでやや不安定だったが、拍子木を開くことで安定性を得ることができた。

まさにトレイのために作られたと言っても過言ではない。


まずはご飯からいただく。


美味しい。白米はいつ食べても美味しい。

日本人に生まれて良かったと、心の中で感謝する。

 

次はメインディッシュの餃子と洒落込もう。


よっ


ほっ


掴みづらい。

圧倒的に掴みづらい。

 

 

 


そういう場合は、カチンコを2枚用意するのが賢明だ。


ほうら、この通り。

簡単に掴むことができる。


ラー油ポン酢にちょいっと。


ご飯にワンバンが私の流儀。


美味しい。とても美味しい。

肉肉しい食感の中に、具材の大きさが良いアクセントになっている。本当だ。信じてくれ。


ちなみに、カチンコを2枚使用する際は、このように拍子木に手を挟むようにして使うことが望ましい。

箸よりも手に馴染む感覚がある。本当だ。信じてくれ。


ごちそうさまでした。

カチンコ飯の美味しさは一潮だ。私はいま、大きな満足感と飲酒による眠気に苛まれている。

 


さてと、それではカチンコを枕にして一眠りでもするかな。

 

おわりに


いかがだっただろうか。

ただカチンと鳴らすだけの、ものの10秒で飽きそうであったカチンコには、これだけの有用性が秘められていたのだ。

最後に、もう一度問いたい。

 

 

君はカチンコの有用性を知っているか?

 

 

 

余談

まずはここまで読み進めてくれた識者諸君に感謝を述べたい。

このように非常に有用性が高いカチンコであるが、私はカチンコを手放すことにした。

私の役目は、もはやカチンコを使うことではない。カチンコの素晴らしさを広く世に知らしめることだと感じたからだ。

 

 

そんな使命感に駆られ、私はカチンコをヤフオクに出品した。

興味がある識者諸君は、ぜひ覗いてみるといい。

それでは。

 

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